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メラメラと

『飼い喰い』トークイベントはようやく一段落いたしました。
ご来場くださったみなさま、ありがとうございました。能町みね子さん、服部文祥さん、上原善広さんと、それぞれ全然違う切り口で密度の濃い話ができたので、こちらとしてもやりがいあり楽しかったです。ま、へとへとにもなりましたが。
「月刊世界」誌上で対談してくださった角田光代さんともども、本当にありがとうございました。
それと、
たくさんの媒体で取り上げていただきまして、恐縮です。

ブログに書けませんでしたが、16日にはニコ生ノンフィクションにも出していただきました。
藤井誠二さん、湘南びゅあハムの平井三郎さんも、どうもありがとうございました。
平井さんは弁が立つのでどんどん話をする場を作ったらいいと思いますよ。

インタビューやラジオなどがまだちょこっとあります。
媒体はまだ申せませんが、稲泉連さんにインタビューしてもらえるのが楽しみです。
あの去年行われた週刊ポストの大暴走鼎談を綺麗にまとめた手腕を見せられて以来、もう一度お目にかかったらお礼を言わねばと思っていたので。

そのときの大暴走の戦犯の片割れ、服部文祥さんとは、こないだのトークでもお客さんをはるか遠くに置いてけぼりにして、バンバントチ狂って爆走しまくりましたが、それは杉江さんが活字にできない部分を丁寧に削ぎ落としてくださり「本の雑誌」に収録されますので読んでやってください。はっきり言って面白いです。

さて、本題です。
高野秀行さんの新刊

未来国家ブータン

高野 秀行 / 集英社

「未来国家ブータン」

私がブータンに興味があったのは、なんだか遥か昔のことのようで、
今なんだか幸福度が高くエコだということでもてはやされているのを凄まじく遠目にみていたくらい。

高野さんは独特の感覚で、ブータンという国にちょきちょきと、歩く速度ではさみを入れてゆく。歩いた分だけで、それがブータンの全てではないのに、すごくいまのブータンの空気が伝わってくるのだ。上手い。人々がなにを恐がり、気にして、楽しんでいるのか。彼らが幸福を感じて暮らしている理由も検証しているのだが、程よく冷静。憧れたところで、いまの日本がブータンになれるわけがないしな。

食肉や動物を殺すことに関するタブー観、差別の歴史などにも触れているのはありがたいところ。

しかし一番うなったのは、
「それにしてもなぜここが国家なのか」という問いなのだった。そうそう、これってみんながブータンに対してなんとなく思いながらも無意識に引っ込めてしまいがちなんだよね。ミャンマーや雲南省など?周辺の地域を丹念に歩き旅してきた高野さんがつぶやくからこその深みと説得力で、迫る。


ちょうど先日私はイスラエルを取材してへろへろになって帰国してきた。数十キロ先では空爆が繰り広げられているにもかかわらず、それが信じられないくらい静かで美しいゴラン高原を見て、入植第三世代のイスラエル人たちと話をしながら「国家ってなに」「ユダヤ人てなに」という問いに向き合っていたのだった。

しかし取材は「屠畜紀行」のためだったので、そうそうたくさんは書けない。ああ、私も一冊まるまるひとつの国で書いてみたいぞ、ちくしょう!!と、「未来国家ブータン」を読みながらもだえてしまったのであった。ていうかだんだん食肉とは別に、イスラエルもう一回取材して一冊書きたい気分がたかまりつつある。高野さんのせいです。

次の本になるのかどうかわからないけれど、高野さんはソマリランドの取材もしている。ここでもまた高野さんの目と足でたどられた「国家」を目にすることができるに決まってる。今からものすごく楽しみなのである。
by riprigandpanic | 2012-04-21 02:46 | ほんっ


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