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つけてきたものとついてきたもの

日々、きものに割烹着

猪谷 千香 / 筑摩書房



著者の猪谷さんは
以前「きものきたいねっと」というサイトをやっていらして、
今はなき谷中カフェの二階などで着物のイベントもしていた。一箱古本市にもきもの関係の古本を詰めこんだ箱を出店してくださいましたっけ。なつかしいです。そのせつはありがとうございました。

あでやかなきもの、ではなくて
普段着としてのきものを着たいという想いのつまったやわらかなエッセイです。

さりげないはなしですが、実はさりげないものは一番むずかしいものです。
著者のように三代続いた着道楽の、江戸の暮らしに根付いたこきものが身近にある豊かな環境にあっても、現代の生活様式の中では「きものをきたい」という確固とした意思をもって生活の中に組み入れなければ、きものをきることはできないのです。
しかし身につけるとはそういうもので、すこしずつついてきたときに感じる喜びもまた格別のようで。


きものはまとうもの

という言葉に深く納得。
製本をやっていたとき
着物地をよく裏打ちして表紙に使いましたが、やっぱりなんというか、厚ボールに貼ってしまうと、布の良さって半減するんだよね。まだ掛け軸とか和本のようにたわめられるくらいのしなやかさをもたせるならいいけど。
布はやっぱり
体温のある柔らかな身体にまとわせるのが一番
そのよさが発揮されるんだなとあらためて思いました。

普段着のこなれたきもの姿のおばあちゃんたちのスナップ写真がとてもいいです。
きりん果さんの装丁も素敵です。

猪谷さん、初著書、おめでとうございます。
次作もたのしみにしておりますよ。
by riprigandpanic | 2010-03-15 20:19 | ほんっ


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