十七頭の妊婦豚たちの出産に立ち会いました。
ホテルに戻ってリレー読書日記のゲラファクスを受け取る。 坂東眞砂子 『「子猫殺し」を語る』について書いたんであるが、これほどまでに書いたときと温度差を感じることって、今後ないのではというくらい、昨日一日で見た多頭出産で私の脳は吹っ飛びました。ベケットウォーター(カンタベリーの聖人トマス・ベケットの脳漿と血液が入っているという水 巡礼者がこぞって飲んで薄まっていった)のように薄くなり消えそうです。 子猫殺しで心ざわつくようなあたしは何処へ。今のあたしならば全然以下自粛。ええ、朝一番に豚舎に行ったら夜明け前に生まれた子ブタのうち二頭が死んでいたんですが、夜で見ている人がいなかったため、忍び込んだ猫に下半身を以下自粛。いや猫じゃなくて気の立った母豚にという可能性も。とにかくあまりにも簡単ではかなく、そして。 凄み満点なスタートを切って、三桁もの命生まれる瞬間に立ち会えたんですが二桁の死にも同時に立ち会いました。これまで何度も心のメーターをふっ切る思いをしてきたような気がしてきましたが、今回はもうこれまでと比べ物にならないです。怖いとか気持ち悪いってんじゃないんです。ただひたすら頭真っ白になりました。屠畜はハードル低かったよなあ、今思えば。生き物としての触れ合う期間が短すぎましたからね。あって間に死んで、後は延々切り分ける作業を見ていたわけですからねえ。面白いだけで頭まっしろ、なんてことにはならんかったです。 自分がどこに行こうとしているのかわからなくなってきて心細くなってたところ ちょうどゲラのことで電話をかけてきた週刊現代のTくんに網膜に映ったことをまんま話したら 「書くものを楽しみにしてまーす。僕は絶対にみたくないでーす。おおこわーい」と冷酷にかわされ正気に少しだけ戻ってきました。 空を見上げると満月。 強い子が生まれるような気がしますって書いた、数日前の私はなんという大馬鹿ロマンチック野郎だこんちくしょう。150頭くらい生まれているんだよ。どれをyとしてもらうかなんて、わかんないよ!!今決めたって、ここ数日でまだ死ぬもん。これとこれとこれは死ぬかもとか、ど素人のあたしでもわかるし、そうでなくて強そうなやつでも母の下敷きになって死ぬかもしれないし。今も死んでるだろうし。念のために言っときますが、かわいそうだと怒ってんじゃないんですよ。かわいそうと思わなくはないですけど、その場で死にそうなのを一匹だけ抱き上げてかわいそうだからあたしが以下略なんて(あの場においては)失礼なこと、小指の先ほども思いつきゃしませんよ。それでもやはりあまりにもはかなくて。 ああ、赤羽のスナックのママになって叫んだらどんなに気楽か。(@清野のブログ)まあ詳しくは連載で。 さてシュタイナー教育にはまっていた友人は、出産のときに自分の胎盤を醤油つけて食べたそうで、さすがの私もそれを聞いたときは気が遠くなりました。人にはいろいろな琴線がありますが、私は共食いはダメだなあ。あと胎児系は苦手なんだよなーどうしても。なんでもいいってわけじゃないんですよ、これでも。 しかし豚の胎盤ならば食べてもいいかもしれないわあなんて、以前飲みながら豚屋の若社長に話していたらどん引きされて「俺は無理」と言われたのでした。 ええ、今日見てわかりました。わかったよ、Oさん。絶対無理だね。無理ったら無理です。ありえません。姿形と気分の問題より以前に、フィジカルにメディカルにほぼ不可能でした。百聞は一見にしかず。ほんと、養豚に関してはこの言葉通りのことばかり起きます。なぜなのかも連載でね。 現在の多頭飼育はなかなか部外者は入れなくなっているのが現状です。そんななか、なんでも見ていいよと言って下さるS畜産さん、本当に本当に貴重なものをみせていただいて、感謝の気持ちで一杯です。 週刊現代 りレー読書日記 以下の本で書きました。 『「子猫殺し」を語る』坂東眞砂子 双風舎 『サイのクララの大旅行 幻獣、18世紀ヨーロッパを行く』東洋書林 『乱反射』貫井徳郎 朝日新聞出版 『ワイルド・ナイツ』古泉智浩 双葉社
by riprigandpanic
| 2009-03-12 19:32
| 連載中
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