私が大学生になる頃にはもうすでに寺山修司は亡くなっており、
天井桟敷を観たわけでもないのですが、 バブル末期の喧騒に合わせて生きていくことに不安と違和感を感じた一部の大学生たちは、 かつてのカルチャーに憧れを持っていました。私もそんな一人でした。 Z世代が昭和に憧れるよりはもっとマイナーでやさぐれた感じでしたね。 円覚寺の学生座禅会にもそんな雰囲気はあったと思います。 バイト先などで出会う年上の人たちから ブリジットフォンテーヌだの、ジャックスだの、そして寺山修司を教わりました。 小さな映画館で「田園に死す」と「草迷宮」を観たのでした。 なんかすごいかもと思わせてしまうおどろおどろしい映像、大好きだった横溝正史の世界観が より一層ヒステリックになったような様子に圧倒されつつも、話としては 田舎に生まれた「息子」の鬱屈なわけで、 完全に蚊帳の外。「これは私の物語!!」みたいな感動には包まれませんでした。 恐山にもっていたなんとなくのイメージも、 「田園に死す」に拠るところが大きいかもしれません。なんとなくしか覚えてないんですけど。 とはいえやっぱり記念館があるのならば行きたいくらいには忘れ難い作品群。 前日仏ヶ浦から道を迷ってしまい暗闇ドライブとなり、 私の運転を励ましてお疲れの小島さんをホテルに置いて ちょろっと観てきました。 おそらくマニアにはたまらん作りなのでは。 事前に申し込めばアーカイブから映画など視聴できるようです。 机の引き出しを一つ一つ開けて懐中電灯で照らしながら資料を読むという展示も興味深かったです。 今改めて短歌を読むとやっぱり凄いです。 館を出て少し歩いたところに歌碑がありまして、その向かいの池がとても美しかったです。 遠出する機会がなくなっている中、誘ってくださった小島慶子さんに感謝です。 車中でたくさん話も出来ました。 ちなみに恐山の中、携帯はつながりませんし、硫黄のせいでパソコンなどすぐに調子悪くなるそうです。 新築した宿坊も釘はステンレス製にしたとか。それでも室外機がつく冷房は難しいようです。 いらっしゃる方はご注意ください。 私はなんだかスマホの電池の減りが早くなりました。 それとイタコさんについての問い合わせは恐山では受けていないそうです。 #
by riprigandpanic
| 2024-09-16 17:00
![]() ![]() ![]() ![]() (今のようにきっちり検索しきれないのではっきりしません) 記憶違いかもしれませんが。 北側の佐井漁港からの遊覧船に乗って行きました。佐井漁港までは車でした。 通常乗客は20分ほど仏ヶ浦を散策してそのまま同じ遊覧船に乗って漁港に帰ります。 一日何便出ていたのか、私は船員さんと交渉して次の便が来るまで仏ヶ浦で一人でいたいと主張。 当時はまだ女性一人旅は自殺するのではと嫌がられていたので良く要望を聞いてくださった。 で、一旦船が出て行ってから一時間?二時間?静かな仏ヶ浦でぼんやりしていました。 仏ヶ浦の奇岩はスケール大きく、ちょっと日本離れしているようにも思えます。 歩き疲れ、山を背に岩を眺めようと座る場所を探していて、窪みのようなところに 行きました。天然の祠のようになっていて石塔がが祀ってありました。 で、その脇にカモシカがいたのでした。 祠をねぐらにしていたのでしょうか。若くはなさそうな風情。そっと近づいても逃げず、 石塔を挟んで並んでしゃがみ、奇岩を眺めることとなりました。 野生の反芻動物と相対した時の感覚はなんとも言えないもので、カモシカはぼやーっと 反芻しながら急にビクッと私のを方を見て、や、何者??となるのですがまた ボやーっと反芻。を次の船が来るまで繰り返してました。 野生の反芻動物との二人きりになることなんてなかなかないことで 忘れ難い経験となりましたし、 恐山を見てから行ったことも手伝いこの世から半分浮いたような感覚を味わいました。 令和になって、地図を見てみると、 仏ヶ浦へはすぐ山の上まで道路ができて、くねくね折れ曲がった下りの遊歩道も出来てました。 当時道があったらすみません。なかったような気がします。船でしか行けないと言われた記憶があります。 で、その道は通行止めでした。そして恐山からだと南の脇野沢漁港に行く方が近いと小島さん。 フェリー「夢の平成号」があると。平成号。うーんこれは三十年前にあったのかもしれません。 しかしこのフェリー、いや高速船くらいの大きさで、ものすごく揺れました。海が荒れていたようです。 瀬戸内の穏やかな海に慣れていた身にはキツかった。しかしその甲斐あって下北半島西岸の岩肌をつぶさに眺めることが 出来ました。揺れて撮影はほとんどできませんでしたが。赤いところがあれば急に白くなったりと、 いくつかの岩が混成しているようで、小豆島の岩の成り立ちと同じくらい複雑そうで、非常に興味深かったです。 岩の解説ツアーがあればいいのにと思いました。 仏ヶ浦の大きな奇岩を眺め、三十年前にカモシカと過ごしたくぼみを探したのですがなかなか見つからず、 もしやあれは私の壮大な記憶違いなのではと焦りました。が、なんと遊歩道が祠の真ん前を通っていて岸辺から 見えなくなっていたのでした。奇岩を眺めていたカモシカは、どこで死んだのか。子孫たちはまだ下北半島を 闊歩しているのでしょうか。 うちのヤギたちが寝台の上に乗って風に吹かれて気持ちよさそうに反芻しながら遠景を眺めているのをみると 仏ヶ浦のカモシカを思い出します。 景色を眺める愛でるという行為は、人間だけのものではないのかもしれない。 そんなわけで北からと南からと仏ヶ浦を目指したこととなり、図らずも下北半島の西岸を制覇したことになりました。 #
by riprigandpanic
| 2024-09-16 09:45
すでに十日も経ってますが、 恐山、仏ヶ浦、寺山修司記念館と行ってきました。 恐山と仏ヶ浦には三十年くらい前に行ったことがあります。特に仏ヶ浦は再訪してみたいと思い返す場所でしたので 小島慶子さんから恐山に行きませんかとお誘いを受けた時、 仏ヶ浦にも寄りましょうと二つ返事で行くことにしたのであります。 で、私は上記の新書を読むまで恥ずかしながら知らなかったのですが、恐山は曹洞宗の管轄なのでした。意外な組み合わせです。 どっちかというと密教系なのかなと思っていました。 小島さんのご縁で恐山菩提寺院代である禅僧で著者である南直哉氏に境内を案内していただきました。 本堂に大量に持ち込まれる花嫁人形(冥婚の風習が令和になっても残っている衝撃。。)などから感じられたのは、 死者の気配ではなく、大事な人に死なれてなお生き続けている人たちの死者への念でした。 残され生きている人たちが死者をあらしめ、恐山をパワースポットたらしめていると。 南氏のお言葉によれば恐山はパワーレススポットなのだそうです。 死んだ人を求める気持ちほど普遍的なものはありません。でもその気持ちを素直に出せる場所はそう多くない。 恐山ほど死者が生きているかのように生々しく思い浮かべ対話しても赦される場所はないのかもしれません。 さて宿坊に宿泊すると、夜10時まで外湯に入りに行くことができます。入山料を払ってお参りした人も6時までなら入れます。 これがなかなかすごかった。 賽の河原に見立てた石がゴロゴロしているところに唐突にポツポツと四棟、木造の小屋が建っており、 昼間は参拝客が通る場所でもあるし、三十年前に来た時には入る勇気が出なかった。むしろ夜の方が行きやすい。 とはいえすぐそこは賽の河原に見立てられた荒野(境内だけど)に刺さった風車がカラカラ回っていて、地蔵菩薩像がすっくと立っていらっしゃる。 いくら死者の気配を感じない私でも、強烈だなとはやはり思うのでした。 女湯二つ、男湯一つ、混浴一つ、男性客が一人だけだったこともあり、時間をずらしていただき、四つ全部入らせてもらいました。 四つそれぞれ少しずつ泉質が異なるそうで。男湯が一番熱くて濃かった気がします。 ところで恐山と言えばイタコの口寄せ。寺院とは雇用関係なく、大祭の時に山にやってきて勝手に店開きします。 これは三十年前から聞き知っておりました。記憶に間違いなければ外に座っていたはず。そこにずらりと行列ができていた。 それがイタコさんの高齢化に伴い、なんと専用の建物が建っていた。しかも私たちが行った日にはイタコさんが一人来ていた。 南氏に「どうですか」と言われましたが、私が思い浮かべる死者は皆、私に呼び出されても「はあ?あんた誰だっけ」というリアクションしか しないのではないか。せっかく呼び出してもらってそれでは情けない。と変な自虐が湧いて遠慮したのでありますが 下山してから今や希少な日本のシャーマンに会って話せる機会だったのだから、捨て身でチャレンジしてもよかったのではと思ったりもしました。 #
by riprigandpanic
| 2024-09-16 00:18
新刊「私はヤギになりたい ヤギ飼い十二カ月」を出しました。
山と渓谷社から。ヤギと雑草木のカラーイラストがたっぷり入って定価1980円(税込)です。 9月23日には高松の本屋ルヌガンガでお話会をさせていただくことになりました。よかったらどうぞ。 ヤギを飼うようになって、それまで雑草としてひとくくりに見ていた草木をよく観察するようになりました。 一つ一つ、ヤギが食べたがるもの、食べたがらないもの、食べたがるけど実は食べすぎると身体に良くないものなどなど、 それらを季節の巡りとともにまとめたものです。 ヤギたちの個性もそれぞれ大きく異なりますが、ともかく意思の強い動物たちです。 まさかこんなに草木のことばかり考えて暮らすことになるとは思いもしませんでした。 これが枯れてあれが生えてと、草地のミクロな変遷を眺めて流れに乗る愉しさといったら。 何年眺めていても飽きません。 世間がイメージする「搾乳/乳製品販売」「除草」などわかりやすく換金できる形ではほぼ役に立っていません。 始末に困る畑の残渣や剪定枝をいただいたり、糞を土壌に撒いたり、 ゆるくうすくひっそりと、島の生活に関わっています。 八月は一週間連続で、9月に入ってからは11日にInstagramでのライブ配信などもしております。18日も12:00より配信予定です。 二十分くらいを予定しております。 いつも葉っぱをヤギたちにいただいている小豆島葡萄酒園のワイン葡萄の収穫時期なので畑からお送りするかもしれません。 以前Twitterで書きましたが、サイン本を入手された方で、小豆島にいらっしゃるという方にはヤギ舎(奥に鶏舎あり)をご案内致します。 私が島にいない日もありますので必ず事前にinstagramのDMなどでご連絡ください。長袖長ズボン防虫対策推奨。マダニなどいます。 足場が悪いのとヤギたちは人によって態度が変わりますので、凶暴になっている時には柵越しとなりますし、 激しい風雨の場合は延期もしくは中止とさせていただきます。 #
by riprigandpanic
| 2024-09-15 16:41
![]() お仕事のお知らせです。 『おしゃべりな銀座』文春文庫 老舗タウン誌 銀座百点に書いたエッセイを載せていただきました。 銀座というと1996年に池田弥三郎『銀座十二章』の装丁を担当させていただいて、 奥深い銀座の歴史風俗にひれ伏したのであります。それに比べたら 私の銀座体験なんぞなんとも薄っぺらいと思うのですが、気がついたら バブル期の銀座とて、もう遠い過去の歴史として語られてもおかしくはないのかもしれません。 ついでに銀座といえば、今の天皇のご成婚の時に天皇家及び宮内省御用達のお店紹介の取材をしたことがあります。 御用達制度は当時でもうすでに廃止されていましたけれど。私はブツ担当でした。 あちこち取材して、銀座や日本橋にお店があるところも多かったように記憶しております。 と、ここまで書いていて当時取材した村田眼鏡舗が店じまいしていることを知りました。 寂しいです。昭和天皇の眼鏡と同型の眼鏡を見せていただいたのを記憶しております。 実はその仕事をして一年後くらいに村田眼鏡舗の御曹司と飲み会でご一緒したことがあります。 当時眼鏡の専門学校には韓国からの留学生が非常に多く来ていて、私は韓国人女子留学生と家をシェアしており、 失恋した私を彼女が慰めようとして合コンをセッティングしてくれたというわけです。 彼は今どうされているのでしょう。 東京から離れて暮らすようになって、街が変わるスピードにもついていけなくなってきているのですが、 銀座はまだなんとか歩けますし、落ち着く街であります。 それから潮五月号では 最相葉月「母の最終講義』ミシマ社 の 書評を書きました。素敵な、けれどもズシンと響くエッセイでした。 それとこちらのウェブマガジン閏に飼い猪ゴン子にまつわるエッセイを書きました。 よろしくお願いいたします。 #
by riprigandpanic
| 2024-04-18 14:50
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