恥知らずでもあり、照れ屋でもあり、

今から一年くらい前、平山夢明さんと高野秀行さんと編集者とテレビ局のプロデューサーと、飲み食いしたときに、平山さんが高野さんに、「高野さんは照れ屋だから絶対恋愛小説を書くべきだ。いいものが書けはず」としきりにおっしゃり、高野さんはとても困った顔をしていた。別に小説が書きたいなんて一言も高野さんから言ったわけではなかったのだが。

ふつうそういう恥ずかしい話をいい大人が、しかも職業物書きのつまらん見栄も多分にある人間らはしないものだし、したとしてもさらりとにげかわす。爆弾を落とした平山さんは先に帰られ(改札入った瞬間くらいにはきっと忘れ去ってるくらいの適当な話だったろう)、私たちは結局その話を馬鹿正直に引きずってウチザワさんはどうなのよ、ええーあーしはああああ、などととても恥ずかしい深酒をしてしまい、その後結局高野さんとあーしはもう一度会ってうだうだと話を重ね、宮田部長と杉江さんを引きずりこんでエンタメノンフ文芸部をこっそり結成することとなる。

こっそり結成したはずなのになぜか人に知られることになっているところが怖いんだけど、見栄はあっても恥ずかしがり屋でも、同時に恥知らずでもあるのがこの職業なのでいたしかたない。みんなであーだこーだと小説の話をするのはびっくりするほど楽しいので単純にうれしい。中野美代子の小説について語り合える人はミヤタマ部長のほかにいないし。


さてそれはそれとして。

高野さんを照れ屋と評した平山夢明さん。
は、高野さんのさらに上をゆく照れ屋なのではと思う。含羞などというレベルではなく、照れと韜晦をぐっちゃぐちゃに混ぜてフォークで突き刺してトルエンをぶっかけてフランベしようとして手どころか上半身黒焦げになっちゃったようなんである。ラジオでなくてもマイクなくてもそんな感じの話しっぷり。そして書かれるものも。笑いも恐怖も真っ黒焦げ。それが癖になる。

ただしあーしが読んでたのは短編で、これが長編小説になったらどうなんだろうか、黒焦げのまま疾走しまくるのだろうか、いやなんとなく短編にも焦げ跡のわずかな隙間にとんでもなくナイーブで愛情深いものが見え隠れするのはあーしの気のせいかなあ。ま、気のせいだよな、そんな恥ずかしいこと聞いたところでぐっちゃぐちゃに混ぜっ返されるだけだろうしな。と、思っておりました。


ダイナー

平山夢明 / ポプラ社



九年ぶりの長編小説だそうです。おめでとうございます。

とんでもない引きと速さで、真黒焦げに展開してゆく話でありますが(あらすじなどはアマゾンなどでどぞ)、途中からだんだんと、どうしようもないひとでなしの怪物たちが闇の中で信用とか愛情とかを育ててしまう交わしてしまう。そんなものは生まれる前からかなぐり捨てて人様を殺しまくって踏みにじってきた連中が、ふとしがみついてしまう舐め合ってしまう。
……せつない。
こーゆうの、弱いんだよなあ、あーし……えっ? あれ?
これって恋の話なんすか、ええええええええ?? 

ちゅう感じで
ノンストップで読み切りました。

おもしろかった。

というわけで、平山さんが高野さんにほぼ無意識に放った言葉、あれはそのままご自分のことであったのだなと、解釈した次第です。
by riprigandpanic | 2009-11-02 06:08 | ほんっ


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